
インシデント対応とは?効果的なプロセスと成功のためのポイント
インシデントは、ある日突然、予告なく発生します。十分な準備が整っていないと、混乱して適切な対応が取れず、被害を拡大させてしまう場合があります。被害を最小限に抑えるためには、迅速かつ的確なインシデント対応が必要不可欠です。本記事では、インシデント対応の概念と目的を解説し、実際の対応プロセスや押さえるべきポイントについて詳しくお伝えします。
インシデント対応の概念とその目的
インシデント対応(インシデントレスポンスと呼ばれることもあります)とは、企業や組織内で発生した問題や事故(インシデント)に対処するための一連の手続きやプロセスを指します。インシデントについてはこちらのページをご参照ください。
インシデント対応を行う目的としては以下の点があります。
- 事業継続性の確保: 発生したインシデントの種類によっては業務の停止に追い込まれることがあります。インシデントに迅速に対応することで、業務の停止期間を最小限に抑え、収益への影響軽減やインシデント対応コストの削減が期待できます。
- ブランドイメージの保護、信頼の維持: 不適切な対応が結果的に企業イメージの低下を招く場合があります。インシデントに対して適切に対応することで、取引先や顧客からの信頼を損なわず、ブランドの信頼性や評判を守ることができます。
- 法的要件の遵守: インシデント、特に個人情報漏えいが発生した場合に、個人情報保護法などの法的要件に従う必要があります。適切なプロセスを確立しておくことで、これらの要件を遵守し、法的な罰則や訴訟のリスクを回避できます。
これらは組織の事業継続性を守るためのものであり、インシデント対応は単なる「事後処理」ではなく、経営戦略の1つとして位置づけられています。
インシデント対応プロセス
インシデント対応には、一般的に次のようなプロセスが含まれます。
1.検知と報告
インシデントが発生した際、関係者が素早く情報を報告することが初動の鍵となります。これにより、早期に問題が特定され、適切な対策を講じることができます。また、事前にネットワークや端末のログなどを監視する体制を構築しておくことで、インシデントの早期検知が可能になります。
2.影響評価(トリアージ)
発生したインシデントの影響度や緊急度を評価し、対応の優先順位を決定します。この優先順位の決定プロセスをトリアージと言います。これにより、限られたリソースを有効に活用することが可能となります。
3.初動対応
発生したインシデントに関連する端末やログなどのデータを保全します。また、関係者に対するヒアリングも併せて実施します。影響評価にて決定した評価内容に基づき、端末のネットワーク遮断、Webサイト公開の一時停止などの被害拡大防止のための対応を実施します。
4.原因の調査
保全したデータや関係者へのヒアリング結果などからインシデントが発生した原因を調査します。自社内で対応が難しい場合は、外部の専門家や調査会社に相談、依頼することもあります。
5.根絶と復旧
特定したインシデントの発生原因に基づき、脅威を完全に排除します。その後、システムや業務を通常状態に戻すための手続きを行います。この際、復旧するシステムや業務がインシデント発生前と同等のパフォーマンスになるようにしましょう。
6.関係者への報告
調査結果を基に影響を受ける可能性のある関係者に速やかに報告を行います。顧客や株主への説明も求められる場合があります。
7.再発防止策の実施、事後分析
今後同じインシデントが発生しないように、改善策を実施します。これには、システムの更新や組織内ルールの見直しが含まれます。また、実施したプロセスのレビューを行います。良かった点や改善が必要な点を洗い出し、次回に活かします。
インシデント発生時には迅速な対応が求められるため、場当たり的な対応になってしまうことがあります。これらのプロセスを事前に明確にしておくことで、インシデントが発生しても適切に対応を進めることができます。
インシデント対応における重要なポイント
インシデントに適切に対処するために、以下のポイントを押さえることが重要です。
1.明確なポリシーと手順の整備
インシデント発生時の対応プロセスを文書化しておくことで、関係者全員が一貫した対応を取ることができます。特に対応するチームが複数の部署にまたがる場合に効果的です。また、CSIRTなどのインシデント対応チームを組織することも有効です。
2.ログやバックアップの取得
システムのログの管理・監視や、システムのバックアップ取得などを事前に準備をしておくことで、セキュリティインシデントが発生しても、迅速に調査・復旧を行うことができます。
3.定期的な訓練の実施
インシデント発生を想定し、定期的に対応訓練を実施することで、メンバーのスキル向上やプロセスの改善が期待できます。また、関係者とのコミュニケーションが適切に行えるかの確認も必要です。
4.最新の情報を取り入れる
インシデント対応の手法は常に進化しています。最新の技術や手法を取り入れることで、より効果的な対応が可能となります。
5.専門家との連携
技術的なインシデントが発生した際には、自社のリソースだけでの対応が難しい場合があります。そのため、外部の調査会社や専門家に相談することも視野に入れておく必要があります。状況に応じて外部リソースを活用することで、より迅速かつ的確な問題解決が期待できます。
これらのポイントは事前に準備・想定しておくことが可能です。これらのポイントを押さえた体制を整えておくことで、被害を最小限にとどめることができます。
まとめ
この記事では、インシデント対応の基本的な概念とその重要性、効果的なプロセス、押さえるべきポイントについて解説しました。インシデントに迅速かつ適切に対応することは、事業の安定的な継続や組織の信頼性維持に直結します。ぜひ本記事の内容を参考にして、自社のインシデント対応プロセスを見直してみてください。インシデントを事前に防ぐ取り組みに加え、発生時に備えた体制を整備することが、リスク管理の実効性を高める鍵となります。