運用監視の現場でのRundeck活用術

現代のIT運用管理において、効率性と自動化は不可欠です。今回は、運用監視の現場でRundeckを活用する方法を紹介します。

Rundeckは、運用監視の現場で手作業による定型作業を自動化し、作業ミスを減らすための強力なツールです。過去の記事(以下)では、Rundeckの基本的な機能、導入のポイント、活用例について解説しました。


Rundeck x Ansible:ツールを活用した運用自動化
そもそもRundeckとは?どう活用するか?

今回は実際の現場での活用方法や他のツールとの連携などもご紹介します。また、同類のツールとの簡単な比較と優位性や、Rundeck活用でのTips & Tricksもご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

運用監視の現場ではどう使われるか?

運用監視の現場では、インフラの健全性を保つために多くの定型作業が発生します。Rundeckはこれらの作業を自動化し、オペレーターの負担を軽減します。

定時ジョブの自動化

ログローテーション、バックアップ、レポート生成など、毎日、毎週決まった時間に実行する作業をジョブとして登録し、自動化できます。これにより、作業忘れや手動実行によるミスをなくすことができます。

障害対応プロセスの標準化

サーバーの再起動、サービスの再開、ログの収集など、障害発生時に行う一連の対応手順をRundeckのジョブとして定義できます。これにより、誰が対応しても同じ手順で作業が行われ、復旧までの時間を短縮できます。

障害対応というシチュエーションでの基本的なRundeckの使い方でもあるのですが、監視システムを導入して障害監視を行っている場合、自動的な障害復旧を定義することも可能です。

サービスの再起動など比較的簡単な対処で障害復旧ができるものについては、一連の対応手順をRundeckのジョブとして作成し、監視システム側で障害発生時にアラートを通知するとともに、カスタムアクションを設定することで、Rundeck API経由でジョブを実行し、障害復旧までを自動化できます。

インフラ変更作業の一元管理

サーバーのバージョンアップや設定変更など、インフラに変更を加える作業もRundeckのジョブとして実行できます。実行履歴がすべて記録されるため、誰が、いつ、どのような変更を行ったかが一目瞭然となり、変更管理が容易になります。

Rundeckと連携可能なツールやサービス

Rundeckは、豊富なプラグインとAPIを提供しており、様々なツールやサービスと連携することで、その能力をさらに拡張できます。


【連携例】

このように様々な形で連携可能ですが、いくつか運用現場での具体的な例を挙げてみたいと思います。

構成管理ツール(Ansible, Chef, Puppetなど)

インフラのプロビジョニングや設定変更をRundeckのジョブから実行できます。これにより、RundeckをCI/CDパイプラインの一部として組み込むことも可能になります。

監視システム(Zabbix, Nagios, Datadogなど)

監視ツールが検知した障害をトリガーにRundeckのジョブを自動実行できます。例えば、CPU使用率が一定値を超えた場合に、自動的にログを収集するジョブを実行するといった使い方が可能です。

通知ツール(Slack, Microsoft Teams, メールなど)

メールなどと連携し、ジョブの実行結果を通知できます。ジョブの成功・失敗をリアルタイムで把握できるため、迅速な対応が可能になります。

クラウドAPI(AWS, Azure, GCPなど)

クラウドが提供しているAPIと連携し、クラウド上のインスタンスの起動・停止、スナップショットの取得などをジョブとして実行できます。

Rundeck Tips

Rundeckをより便利に、効率的に使うためのTipsをいくつかご紹介します。

  • APIを活用した外部からのジョブ実行: RundeckはRESTful APIを公開しており、外部のアプリケーションやスクリプトからジョブを実行したり、ジョブのステータスを取得したりできます。これにより、Rundeckを他のシステムと連携させた、より高度な自動化を実現できます。
  • ノードフィルターの活用: ジョブを実行する対象ノードを、タグやホスト名、OSバージョンなどで動的に絞り込むことができます。これにより、特定のグループにのみジョブを実行したい場合に便利です。
  • 通知機能のカスタマイズ: ジョブの成功、失敗、開始、終了など、様々なイベントに対して通知を設定できます。通知先のツールや通知メッセージをカスタマイズすることで、必要な情報を必要なタイミングで受け取ることができます。

Rundeckと競合するツール、その優劣

Rundeckの競合ツールとして、Ansible Tower (AWX)Jenkins などが挙げられます。それぞれのツールには得意な領域があり、使い分けることで運用効率をさらに高めることができます。

  • Ansible Tower (AWX): AnsibleのWebUIとして機能し、Ansibleのプレイブックを管理・実行するためのツールです。Rundeckと同様にジョブのスケジューリングや権限管理機能を提供します。Ansibleとの親和性が非常に高く、Ansibleをメインに利用している環境では強力な選択肢となります。しかし、Rundeckが提供するような、スクリプトやコマンドを直接実行する機能はAnsible Towerの主要な機能ではありません。
  • Jenkins: ソフトウェア開発におけるCI/CDツールとして広く利用されています。プラグインが豊富で、様々な自動化プロセスを構築できます。運用監視の自動化にも利用可能ですが、開発プロセスに特化しているため、運用監視の現場に特化したRundeckに比べると、オペレーションの可視化や権限管理の面で複雑になることがあります。

Rundeckは、Ansible Towerが苦手な手動実行やアドホックな操作の可視化、Jenkinsが苦手な運用オペレーションに特化した権限管理や履歴管理に強みを持っています。
Rundeckは、運用監視という特定の分野において、より直感的で、使いやすいインターフェースと機能を備えていると言えるでしょう。

まとめ

管理機能は、運用業務の効率化を支える核となります。ジョブの作成、スケジュール、チェーン構築、エラーハンドリング、テンプレート化といった多彩な機能を活用することで、運用業務全体の効率が劇的に向上します。

またWebUIは、ジョブの管理からタスクのスケジューリングまで、視覚的かつ効率的に操作するための強力な手段を提供します。このビジュアルなインターフェースを活用することで、運用業務の効率化を図りつつ、技術系でないメンバーも含めた幅広い利用者層における運用が実現されます。

この記事で紹介した内容を参考にして、Rundeckの理解を深めていただき、業務の効率化につなげていただければ幸いです。運用業務の自動化を進めることで、業務の効率化、サービスレベルの向上などにつながりますので、ぜひ前向きに取り組んでいただければと思います。

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坂本 慶
坂本 慶
1994年の以来ネットワークおよびサーバーの設計構築に従事。現在はマネージドサービス部門にて自社MSPサービスのサービス基板設計・構築や新サービスの検討などを行う。 ---- 日本最大のネットワーク展示会「Interop Tokyo」のShowNet SOC/NOCメンバーとして参加(2002年〜2009年) NPO 日本ネットワークセキュリティ協会の技術部会、U40部会メンバー(2000年〜2010年)

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