IPアドレスの基礎知識:IPv4とIPv6の違いとは?
このセキュリティブログでは、セキュリティに関連する内容がほとんどでしたが、たまにはセキュリティから離れた話をしてみたいと思います。今回はIPアドレスの基本について解説します。意外と知らなかったり、勘違いしてた!なんてこともあるかもしれません。
インターネットを利用する上ではIPアドレスは必須ですが、IPアドレスにはIPv4とIPv6という二つの異なる形式があります。この記事では、IPアドレスの基本的な理解を深めると共に、それぞれの特徴、違い、現状と今後について解説します。
IPアドレスとは?
IPアドレス(Internet Protocol Address)は、パソコン、スマートフォン、サーバー、ルーターなど、ネットワークに接続されるすべての機器に割り振られる「インターネット上の住所」です。郵便物を届けるために住所が必要なように、インターネット上でも通信相手を特定するために一意に割り当てられたIPアドレスを持つ必要があります。
みなさんがブラウザなどでインターネットをアクセスする時に使うのは、例えば www.securewave.co.jp といったような「名前」を指定しますが、実際にはDNS(Domain Name System)と呼ばれる「名前」をIPアドレスに変換する仕組みがあり、 www.securewave.co.jp は 3.33.186.173 というIPアドレスに変換されてアクセスする形になります。DNSについてはまた別の機会に書きたいと思いますが、こういった仕組みがあって便利に使えるようになっています。
IPアドレスにはIPv4とIPv6のニ種類があります。どちらもIPアドレスではありますが、それぞれ異なる仕様・形式となっていて、共存(同時利用)はできますが、互換性はありませんので相互に直接通信を行うことはできません。
IPv4、IPv6とは?
IPv4の概要
IPv4(Internet Protocol version 4)は、最も一般的に使用されているIPアドレスの形式です。一般的に「IPアドレス」と言うとこのIPv4を指すことがほとんどだと思います。IPv4は32ビットのアドレス空間を持ち、約42億個のユニークなIPアドレスを生成することができます。IPv4アドレスは通常、以下のような形式で表されます。
個人や企業のネットワークで広く使用されています。
IPv6の概要
IPv6(Internet Protocol version 6)は、IPv4の後継として設計された新しいタイプのIPアドレスです。128ビットのアドレス空間を持ち、理論的には非常に膨大な数のアドレスを提供できるため、将来的なインターネットの成長に対応することが可能です。IPv6アドレスは通常、以下のような形式で表されます。
個人や企業のネットワークだけでなく、携帯電話やIoTなどの新しいデバイスに適しています。
IPv6はIPv4と比べると新しく規定されたことや、長いアドレス表現を少しでも使いやすくするために省略して記述する決まりがありますが、詳細は別の機会で書きたいと思います。
IPv4とIPv6の違い
アドレス数の違い
IPv4のアドレス長は32ビットで構成され約42億個しか利用できませんが、IPv6は128ビットのアドレス長で構成され、理論上はほぼ無限ともいえる膨大な数のアドレスを利用可能です。これにより、IoT機器の増加など、今後のインターネット拡大にも十分対応できます。
表記方法の違い
IPv4:10進数で4つの数字をピリオドで区切ります。 例:192.168.1.1 IPv6:16進数で8つのブロックをコロンで区切ります。 例:2001:0db8:85a3:0000:0000:8a2e:0370:7334
セキュリティや機能の違い
IPv6は標準でIPsec(通信の暗号化・認証機能)を搭載し、より安全な通信が可能です。また、NAT(ネットワークアドレス変換)が不要となり、エンドツーエンドの通信がしやすくなっています。
自動設定や通信方式の違い
IPv6は自動設定機能(SLAAC)により、ネットワーク機器が接続時に自動的にアドレスを取得できます。また、IPv4と同様にDHCP(DHCPv6)も利用可能です(SLAACと併用も可能)。
IPv4とIPv6の違いまとめ
項目 |
IPv4 |
IPv6 |
---|---|---|
アドレス長 |
32ビット ( 8ビット × 4 ) |
128ビット ( 16ビット × 8 ) |
アドレス数 |
約42億(2の32乗) |
約340澗(2の128乗) |
表記方法 |
10進数、ピリオド区切り
例:192.168.1.1
|
16進数、コロン区切り
例: 2001:0db8::0042:0000:8a2e:0370:7334 |
アドレス枯渇 |
枯渇問題が深刻 |
枯渇の心配はほぼなし |
セキュリティ |
オプションでIPsecが使用可能 |
標準でIPsecが使用可能 |
NAT(アドレス変換) |
必要な利用ケースがほとんど |
推奨されない |
自動設定 |
DHCPなど外部サービスが必要 |
自動設定(SLAAC)に対応
DHCPv6も利用可能
|
通信方式 |
ユニキャスト
ブロードキャスト
マルチキャスト
|
ユニキャスト
マルチキャスト
エニーキャスト
|
普及率 |
非常に高い |
徐々に拡大中 |
IPv4の最大の利点は、その普及率です。しかし、インターネットの急速な発展によって未割当のIPアドレスは枯渇しており、新たな割当が難しくなっています。また、これがIPv6への普及を促す要因となってはいますが、IPv6の普及が劇的に進んでいるわけではありません。
IPv6は、IPv4アドレス枯渇問題を解決するだけでなく、セキュリティ機能の強化や、IPv6の仕様そのもので自動設定機能を提供するため、将来的なインターネットの基盤として期待されており、普及が進んでいます。特にスマートフォン、IoTなど数の多いデバイスでは標準でIPv6が使用されることが多くなっています。
IPv4とIPv6の現状と今後
現在も多くのインターネットサービスはIPv4を利用していますが、IPv6の普及も進んでいます。特にIoTやスマートデバイスの増加により、今後はIPv6対応がますます重要になるでしょう。
まとめ
IPアドレスはインターネットにおける「住所」のようなもで、インターネットを構成する重要な基本要素であり、現在はIPv4とIPv6という二つの形式があります。IPv4は広く普及しているものの、アドレスの枯渇が深刻化しているため、IPv6の普及が進んでいます。この記事では、IPアドレスの基本的な概要と、それぞれの特徴や違いについて解説しました。
IPアドレスの理解は、ネットワークやインターネットの運営にとって非常に重要です。自社のシステムに適切なIPアドレス戦略を考えることが、今後のネットワーク管理において不可欠となるでしょう。もし、さらに進んだネットワークの知識を学びたい方は、専門書やオンラインコースをチェックしてみてください。